我が家は夫婦そろって狩猟免許を持っている。目的はただひとつ。「食べるための肉は、自分たちの手で獲る」。そんなシンプルで持続可能な暮らしを目指して、田舎でゆるゆると狩猟生活を送っている。
きっかけは、スーパーに並ぶ肉に対する違和感だった。狭く不衛生な環境で育てられた家畜たち。運動もできず、病気を防ぐために薬漬けにされている現実。それを知ってから、できる限りそういった肉から離れたいと思うようになった。
狩猟といっても、バンバン撃って獲りまくるわけではない。「有害鳥獣駆除」という名目での狩猟だけれど、我が家が食べるぶん以上のジビエは獲らない。2~3ヶ月に一頭獲れればじゅうぶん。だから罠も1つか2つだけ、山にゆるーくかけておくだけ。まさに「ゆるハンター」だ。
久しぶりの収穫は鹿
そんなある日、久しぶりに罠に鹿がかかった。

よりによって、夫は出張中。イノシシだったら怖くて食肉処理施設にお願いして、殺して引き取ってもらうところだけど、相手は鹿。しかもそんな大きくない。自分でやってみようと、家から鉄パイプを持って山へ向かった。

↑息子撮影。学校から帰っていたので一緒に山へ。
罠にかかっていたのは、短い角のあるオスジカ。頭を狙うのがなかなか難しくて何度か叩くはめになったけれど、頭を狙い脳震とうさせて、ナイフで喉を刺す。出来るだけ苦しまないように手早くする。命をいただく最低限のマナー。そして喉からしっかり血抜き。鹿の目は青くて、見惚れるほどの美しさ。こういう工程をするのは残酷だと思う人もいるかもしれないけど、肉を食べるというのはこういうこと!学校の授業でもして欲しいと思う。最大限の尊厳をもって無駄なくこの1匹の命をいただこうという気持ちになる。

解体は友人と一緒に川辺で
さて、問題は「どこで、誰と解体するか」。仕事終わりの夕方やし、一人では手に負えん。すぐに友人に連絡すると「うちの近くの川で一緒にやろう」と言ってくれた。ありがたい。
友人は狩猟免許を持ってはいるけれど、狩猟自体はしていない。何度か猪や鹿を1匹丸々もらって、捌いたことはあるそう。こういうとき、一緒にジビエ解体ができる仲間がいるって本当に心強い。川辺で皮を剥ぎ、肉を切り分けていく。鹿はマダニがたくさんついてた。家に持ち帰らないよう注意しながら、世間話をしながらの解体作業はなかなか楽しい。

鹿肉は内臓から。無駄なく命をいただく
お肉は友人と半分こ。それでじゅうぶん。これだけで、我が家の食肉事情は2ヶ月は安泰。冷凍庫がパンパンになるくらいには、十分な量。

ジビエ肉は、新鮮なうちに内臓から食べるのが基本。まずは心臓とレバー。スライスして、塩コショウだけで炒める。それだけで驚くほど美味しい。特に鹿は今まで臭みを感じたことがない。猪は個体差がかなりあり、臭いのもいる。
冷凍保存する前には、骨から肉を外す作業をする。アバラはスペアリブにして甘辛く焼いて食べるのがおすすめ。
太ももなどの太い骨は、周りの肉をある程度とって、圧力鍋でじっくり煮込んでスープを取る。これがまた絶品。強めに塩コショウするだけで、体に染み渡るような鹿スープが完成。ラーメンのスープにしても美味しい。おでんのスープにもなるし、カレーにしても旨い。骨についたわずかな肉までこそげ取って、具にする。これが我が家のジビエが獲れた時のルーティン。
また罠をかけるのは、1ヶ月後くらい
しばらくは肉があるから、罠はお休み。冷凍庫のスペースができてきたら、また山へ出かけて、ゆるく罠をかけるつもり。欲張らず、無理せず、自然と向き合いながら暮らす狩猟生活。
「自分たちが食べるぶんだけを、自分たちで獲る」
こんな生活ができる島暮らし最高です、感謝感謝。
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